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安倍晋三13  2001-2002

新・英雄伝

 2001年4月26日に就任した小泉総理の所信表明演説は5月の連休明けに行われた。この演説において小泉は、

「構造改革なくして日本の再生と発展はないという信念のもとで、経済、財政、行政、社会、政治の分野における構造改革を進めることにより、新世紀維新ともいうべき改革を断行したいと思います。痛みを恐れず、既得権益の壁にひるまず、過去の経験にとらわれず、恐れず、ひるまず、とらわれずの姿勢を貫き、21世紀にふさわしい経済・社会システムを確立していきたいと考えております」

「近年、経済が停滞する中で、政府は、公共投資や減税などの需要追加策を講じてまいりました。しかし、長期にわたり、この政策の繰り返しを余儀なくされ、我が国は巨額の財政赤字を抱えています。この状況を改善し、21世紀にふさわしい、簡素で効率的な政府をつくることが財政構造改革の目的です。私は、この構造改革を二段階で実施します。まず、平成14年度予算では、財政健全化の第一歩として、国債発行を30兆円以下に抑えることを目標とします。また、歳出の徹底した見直しに努めてまいります。その後、持続可能な財政バランスを実現するため、例えば、過去の借金の元利払い以外の歳出は、新たな借金に頼らないことを次の目標とするなど、本格的な財政再建に取り組んでまいります」

 彼は財政の構造改革を宣言した。そして、将来のためには今は多少の痛みに耐える必要があるということを理解して貰うために、幕末の戊辰戦争で敗れたために財政が窮乏した長岡藩の例を持ち出した。

「明治初期、厳しい窮乏の中にあった長岡藩に、救援のための米百俵が届けられました。米百俵は、当座をしのぐために使ったのでは数日でなくなってしまいます。しかし、当時の指導者は、百俵を将来の千俵、万俵として生かすため、あすの人づくりのための学校設立資金に使いました。その結果、設立された国漢学校は、後に多くの人材を育て上げることとなったのです。今の痛みに耐えてあすをよくしようという米百俵の精神こそ、改革を進めようとする今日の我々に必要ではないでしょうか。」

この小泉の演説に議場から拍手が沸き起こった。多くの議員が財政健全化の必要性を感じていたことの現れであろう。また小泉はこの時の所信表明演説で、「積極的な国民との対話」を進めるためにメールマガジンを発行することも明らかにし、引き続き官房副長官を務める安倍が、メールマガジンの編集長として、閣僚のメッセージや内閣の政策説明を週一回発信することとなった。このメールマガジンを提案したのは、経済財政担当大臣の竹中平蔵であったが、それはともかく、安倍は5月29日に創刊準備号を、6月14日に創刊号を発信した。ここに何を掲載するか考えながら日々の業務を行うことになったので、彼にとっては政策をいつどのように発信するのが適切かなどについて学ぶ良い機会になったのではと思われる。

 この年の夏には参院選が行われることになっているが、その前に、安倍は北朝鮮の朝鮮労働党関係者三人が、日本で開催予定の集会に参加するために、入国を申請しているという話を聞きつけた。金正男事件で蚊帳の外に置かれていたことが念頭にある安倍は、この時、先手を打って外務省のアジア大洋州局長に入国許可を出さないようにとの指示を出した。すると、どういうわけかこれが国会で取り上げられることとなった。2001年6月7日の参議院外交防衛委員会での公明党の益田洋介議員の質問である。

コメント

  1. 並木橋 より:

    いつもながら、マスコミ報道の背後にある事実を知ること、知ろうとすることが大切と感じました。
    それにしても、岸田首相の派閥解散の発言には驚かされました。ネット上でもいろいろな意見が飛び交っているようですが、議論されること自体にも意味があると思います。