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安倍晋三13  2001-2002

新・英雄伝

 東京地裁で行われた「よど号ハイジャック事件」の関係者の公判で、ハイジャック実行犯の妻である八尾恵が、昭和58年に有本恵子さんをロンドンから北朝鮮へ連れ出したと証言したのである。「よど号ハイジャック事件」とは、1970年3月31日羽田空港発板付空港(現福岡空港)行き日本航空351便(「よど号」)が、共産主義者同盟赤軍派を名乗る9人によってハイジャックされた事件である。この卑劣な事件の犯人グループは、乗員・乗客を人質に取った上で、よど号を北朝鮮に向かわせるよう機長に要求、同機が板付空港と韓国金浦国際空港を経由する間に乗客と一部乗員を解放し、身代わりとして運輸政務次官を搭乗させて、同機を北朝鮮に向かわせた。そして同機が北朝鮮に着陸すると、彼ら自身は北朝鮮に亡命してしまった。

 そのよど号ハイジャック犯の妻がヨーロッパで北朝鮮による日本人拉致に加担していたと知った安倍は、改めて共産主義・左翼運動に対する憎悪と、北朝鮮に対する敵愾心を深めた。この後、彼は3月29日に「拉致疑惑に関するプロジェクトチーム」を開催し、拉致被害者の家族が小泉総理に面会できるよう取り計らった。こういうことが堂々と出来るようになったのは、親北朝鮮の野中広務が小泉内閣では要職についていなかったからだ。ちなみに、野中同様に東京裁判史観に捕らわれていると見られる河野洋平もこの時、要職に就いておらず、2003年11月には衆議院議長に祭り上げられることとなる。

 さて、拉致被害者の家族が小泉総理に面会した後、安倍らの働きかけにより、4月11日に衆議院で、また4月12日に参議院で「日本人拉致疑惑の早期解決を求める決議」が全会一致で採択された。そして、4月25日には新拉致議連(北朝鮮に拉致された日本人を早期に救出するために行動する議員連盟)が発足した。旧拉致議連の中山正暉会長が2000年8月に日朝友好議員連盟の会長に就任した後、北朝鮮寄りに立場に変わったとの批判が巻き起こったため、有志議員が体制の一新を図ったのである。新拉致議連の会長には安倍官房副長官の要請で石破茂が就任した。この時「なんで私ですか」と尋ねた石破に安倍は「安全保障について考えや知識があり、あまり保守的な立場ではないから」と答えたという。(NHK政治マガジン2022年8月15日)

 新拉致議連は、石破会長、西村慎吾幹事長、平沢勝栄事務局長、松原仁事務局次長らの態勢で、以後北朝鮮に対して厳しい姿勢で臨むこととなった。

 安倍官房副長官の活躍が顕著になると、彼と福田官房長官との仲が良くないという噂が広がるようになった。森内閣時代からコンビを組む両者だが、北朝鮮へのコメ支援、李登輝総統の来日、不審船の引き揚げといった問題でことごとく対立していたからだ。

コメント

  1. 並木橋 より:

    いつもながら、マスコミ報道の背後にある事実を知ること、知ろうとすることが大切と感じました。
    それにしても、岸田首相の派閥解散の発言には驚かされました。ネット上でもいろいろな意見が飛び交っているようですが、議論されること自体にも意味があると思います。