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安倍晋三13  2001-2002

新・英雄伝

「昨日、外務省は、朝鮮労働党関係者3人の入国の申請を認めない、こういう決定を下したと。その背景には、官邸サイドの入国許可反対の意向を副長官が槙田アジア大洋州局長に伝えて外務省も断念せざるを得なかった、本来は外務省は前例を踏襲して入国を許可する方針だったけれども、官邸サイドの強い要望でこれを断念したと、こういうふうに聞かされています。この3人は、6月11日、都内で催される予定の反日本政府の集会に出席する予定だった。非常に政治的な判断である。この一連の経緯について、それから官邸の意向についてお聞かせ願いたいと思います。」

 この質問に対して、安倍官房副長官は「一般論でございますが、その入国をしたいと言っている方が我が国の利益または公安上問題がないかどうか、またその方が民間人かどうか、あるいはそうではないのか、警察がいわば懸念を持っているかどうか、そしてまた入国の目的が政治的な目的あるいは政治運動かどうか、そういうことも見きわめた上、ケース・バイ・ケースで判断をするということになっているわけでございます。本件につきましては関係省庁で協議をしたわけでございますが、その上で官邸とも相談をということでございましたので、私どもと相談をさせていただいた結果、総合的な観点からそうした結論を出したということでございます」と回答した。別におかしな答弁と言うわけではあるまい。ところが、益田議員は実に奇妙なことを言い出した。

「御承知のとおり、日本国憲法第19条というのは、思想及び良心の自由を認めております。さらに21条は、集会、結社、表現の自由というものを認めている。なぜこれが外国人に、他国の人については適用されないのか」

 こんな的外れな質問に付き合うのは馬鹿馬鹿しいと思ったのか、安倍はズバリと本質を突いた。

「御承知のように、北朝鮮は既に警察が認定しているだけで7件、10人の拉致、これは疑惑ではございません、警察が既に認定をしているわけでございます。そして、さらには麻薬等の問題もございます。そういう等々の観点から、既に警察等々の関係者からも意見を聞いた上で判断をしたということでございます。我が国のそういう治安上の観点からも当然の判断であったと思っております。」

 安倍は自信を持って答弁した。もっとも、内心では議員を使ってゆさぶりをかけて来た

 外務省、いや同省のアジア局に対し、嫌悪感を持った。安倍は、父が外相だった時に秘書官を務めており、外務省内には習得した外国語によって派閥があることは知っていたが、この時、改めて アジア局人脈は油断がならないと実感した。後にも触れるが、父の晋太郎が通産大臣と外務大臣を経験していたことから、安倍晋三も通産省(経産省)と外務省には多くの知り合いがいる。しかし、後の安倍内閣は「経産省内閣」と言われるほど経産省との関係が密接だった一方で、安倍は外務官僚をさほど信用しなかった。その理由の一つは、この北朝鮮に対する外務省の「事なかれ主義」の姿勢である。

コメント

  1. 並木橋 より:

    いつもながら、マスコミ報道の背後にある事実を知ること、知ろうとすることが大切と感じました。
    それにしても、岸田首相の派閥解散の発言には驚かされました。ネット上でもいろいろな意見が飛び交っているようですが、議論されること自体にも意味があると思います。